金の生産量と米国の経済指標

金(ゴールド)の生産量はピークにすでに達していて、今後は減少傾向になっていく。
景気の実態を反映していない米国の経済指標

 通貨の購買力、貴金属、土地などの現物資産の評価法には多くの方法がありますが、どんな場合でもインフレを考慮する必要があります。
 インフレを調整した後の収益や価値の増加がいかばかりかを算定しなければ、通貨システムの創りだすイリュージョンの世界から脱することはできません。
 幻影を見て暮らしている人々は、毎日、このようにぼやいています。
「給料は上がったものの、我が暮らし楽にならざる」・・・つまり、新札には、政府の借金が相応に含まれている、ということなのです。このことを「ステルス増税」と言います。
 国民が、まったく感知することなく中央銀行システムを経由して、国民一人一人の労働の対価が政府に吸い取られているということです。それは、見えない増税です。
捏造されている米・雇用統計
インフレ調整すると、金(ゴールド)の値はほとんど変わっていない
・・・下のグラフは、過去14回も変更を受けてきた消費者物価指数(CPI)のうち、もっとも経済の実態を反映していると言われている1980のCPI公式を使って、金(ゴールド)の値を調整したグラフです。
CPIは、ある公式で統一しなければ判断の材料になりません。

 消費者物価指数(CPI)をデフレート(インフレ調整する)した後のグラフが上のジョン・ウイリアムスのチャート(上)で、1980年前後がピークになっています。
 インフレ調整すると、1980年頃の金(ゴールド)の値が、ドルに対して、いちばん価値が高かったことを示しています。
 一方、ドルで値付けされただけの金(ゴールド)の値の推移を見てみると、1980年前後は、イランの米国大使館の人質事件やソ連のアフガン侵攻作戦、イラン・イラク戦争の勃発などで、「有事の際の金(ゴールド)」の強みを発揮して値が上がっています。
・・・日本において、もっとも値が低かったのは、1999年の7月から8月にかけてのことで、当時としての目先最安値896円/グラムでしょうか。そのお陰で、1999年から2000年に金(ゴールド)を購入した人は、5倍以上の値上がりを見ていますが、上のShadow Government Statisticsのジョン・ウイリアムス(John Williams)による消費者物価指数(CPI)をデフレート(インフレ調整する)後のチャートに照らしてみると、金(ゴールド)の実質価値は「正貨」というだけあって、ほとんど変化していないことが分かるはずです。
 このように、金(ゴールド)にしても銀(シルバー)にしても、その絶対的な価値は変化しておらず、それを値付けする通貨の側の価値が変化しているに過ぎないのです。ですから、「金(ゴールド)は投資だ」と言っている貴金属コンサルタントは間違いを犯しているのです。
 繰り返しますが、「金(ゴールド)は投資ではなく、資金を移動させて通貨の減価を防ぐための保険」なのです。金(ゴールド)の値が上がるとウキウキ気分になりますが、それは幻想です。
投資コンサルタントは口をそろえて「1万ドルになる」と言う
 ・・・欧米の有名な投資コンサルタントは、「ゆくゆくは、金(ゴールド)は、1トロイオンス当たり5桁(1万ドルの大台)に達するかも知れない」と口をそろえて言っています。
 例えば、経済評論家で投資家のジェームズ・リカーズ(Jim Rickards)は、自著『新しい金のケース(The New Case for Gold)』の中で、「金(ゴールド)は、ゆくゆくは1トロイオンス当たり1万ドルになる可能性がある」と断言しているだけでなく、メディアに出て同じことを繰り返しています。また、ゴールド・マネー(Gold Money)の創設者であるジェームズ・ターク(James Turk)は、「1万ドルを超えて1万2000ドル近くまで上昇する」と述べています。
 インフレ調整前の金(ゴールド)の値は、現在1トロイオンス当たり1280ドル前後で推移しています。ですから、「1トロイオンス当たり5桁(1万ドルの大台)に達する」という意味は、現在と比較して、米ドルの価値(購買力)が8分の1に減価されることを意味するのです。
 ・・・米・連邦準備制度理事会(FRB)が7年半にわたる量的金融緩和に終止符を打ち、利上げに踏み切らざるを得なくなっているのも、これ以上、ドルを印刷してばら撒いても収穫逓減の法則によって効果が見込めなくなったどころか、ハイパー・インフレを引き起こしかねないからに他ならないのです。
 4~5年後からは、金(ゴールド)の生産量が劇的に落ちていく
 今後5〜10年で金(ゴールド)鉱山生産が大幅に減少することから逃れることはできません。これは必然的に金(ゴールド)の新しい供給を絞って価格を押し上げる決定的な要因になります。
 (ブルームバーグ(2016年12月22日付)は、今後の金(ゴールド)生産が先細りになることを強く明示しているデータ集を掲載しました。
その記事では、5つのデータを示して金(ゴールド)の供給量が、今後、劇的に減っていくと結論付けています。中でも、金(ゴールド)の生産量が、この10年で85%も減少したというデータは衝撃的です。

金(ゴールド)の現物は、確実に品薄になります
 ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)とメタル・フォーカス(Metals Focus)は、来たるべく金(ゴールド)の供給引き締め(逼迫)に関するレポートを発表しました。
・・・また、別のレポートでは、2012年以降、GDX(Gold Miners ETF)の企業の設備投資(新しい金鉱山の探鉱と開発に費やす費用)が65%減少したと述べています。
 金(ゴールド)の生産は、2015年がピークだったかもしれない
 コンサルティング・スタンダード・チャータード(Consultancy Standard Chartered)も、同じように、金(ゴールド)の供給に関するレポートを発行しました。・・・金(ゴールド)の産出量は、対前年比で2013年に大幅に減少しました。
 ゴールド・コーポ(Goldcorp)のCEO、チャック・ジーンズ(Chuck Jeannes)の推算によれば、その前の年の2012年が、実は金(ゴールド)の生産量における大きな転換点だった可能性があるとのこと。ビジネス・インサイダー(2016年8月9日付)
 また「有望な新しい金鉱山が、なかなか見つからなくなった。しかし、このことは金(ゴールド)の値上がりに寄与することになった」とジーンズは、2014年に、ウォール・ストリート・ジャーナルに語っています。トムソン・ロイターGFMSが見積もったところ、今年の第2四半期の金(ゴールド)鉱山の供給量は、「2015年の同期間より2%少なくなっている」とのこと。
 アナリストの間では、「2016年に世界の生産量が3%程度減少する」との見通しが立てられています。いずれにしても、金(ゴールド)の生産量はピークにすでに達していて、今後は減少傾向になっていくとの見方が大勢を占めています。
アリゾナ州は経済崩壊に備えて金貨に課税する法律を撤廃した
 5月22日、アリゾナ州のダグ・デューシー(Doug Ducey)知事は、金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属のコインに課していた州所得税を廃止する法案に署名しました。
(アリゾナ州知事 ダグ・デューシー)
・・・米国の人々が、購買力の低下を招くドルの切り下げに対して、資産防衛のために金(ゴールド)や銀(シルバー)を購入し、それを売却したとき、しばしば値上がりから得た「利益」は譲渡所得と見なされ、これに州の所得税が課税されていました。
 しかし、この課税は金(ゴールド)や銀(シルバー)などの本当の「正貨」に対する課税であって、「正貨」そのものの価値は実質的には不変であることから、本質的には、政府による国民の資産の略奪行為に等しいということになるのです。
 金(ゴールド)や銀(シルバー)の売買によって得た譲渡所得とは、「正貨」の絶対価値から相対的にドルの減価分を引き算した値です。このことは、「インフレ調整」で述べたことと同じです。
「大不況の回避地として、アリゾナ州は魅力的だ」
 共和党の元連邦下院議員、ロン・ポールは、アリゾナ州の下院法案2014号の可決・成立を強く支持しています。「自由市場を支持するすべての人々は、このアリゾナ州下院法案2014号の可決を歓迎すべきである。政府が製造したマネーを個人に使うよう強制することほど理不尽なことはない。
 実際のところ、連邦準備制度(Fed)が、その設立以来114年にわたって失敗を重ねてきたように、中央銀行の陰謀に独占的な通貨の支配権を与えることは、政府の介入の最も危険な形である」とロン・ポールは言います。
 「アリゾナ州の人々に、連邦準備制度(Fed)がつくりだした不換紙幣の代替えとして、金(ゴールド)や銀(シルバー)を正貨として、その使用を認めることによって、法案2014号は、連邦準備制度(Fed)が、これから引き起こす大不況を生き延びる手助けになるだろう。
 この法案の通過は、連邦準備制度理事会(FRB)の政策の影響から自分自身、家族、およびその事業を守るために、新たな資金調達の選択肢を求めている人々にとって、アリゾナ州は、より魅力的に映るだろう。
 したがって、この法案はアリゾナ州への新しい投資と雇用を引き付けるのに役立つことになる」と彼は言います。
 日本政府も、金(ゴールド)、銀(シルバー)、プラチナなどの貴金属の値上がり(それは、相対的に円が減価しているので、利益が出たように見えているだけ)を「譲渡所得」と見なしており、50万以下には特別控除が付くものの、それ以上には税が課されます。
 つまり、西側の中央銀行システムに組み込まれている日本は、金(ゴールド)や銀(シルバー)が正貨であるにも関わらず、それを認めないのです。
・・・世界的な経済崩壊、ドルの崩壊は避けることはできません。アリゾナ州の法案の措置は、それを端的に物語っています。
 最後にババを引かされたトランプは、歴代の米国大統領の中で、もっとも悲惨な運命を甘受しなければならないのです。後は、「いつ、それが起こるのか」というだけです。

(くまチューブ)

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